プロスペクト理論とは?リスク評価に影響する4つの原理と応用例を解説
プロスペクト理論は、経済学者のダニエル・カーネマンとアモス・トベルスキーによって提唱された心理学的理論であり、人々がリスクや不確実性を評価する方法を説明します。
この理論によれば、人々は損失よりも利得に対してより敏感であり、同じ金額の損失と利得では、損失のほうがより強く感じられるとされます。また、人々はリスクを回避する傾向があり、同じ期待値を持つリスクを選択する場合でも、確実な利得を選択する傾向があります。
プロスペクト理論は、人々の意思決定に影響を与える要因をいくつか特定しています。それらの要因は以下のとおりです。
損失回避の原理:人々は損失を回避する傾向があるため、同じ期待値を持つリスクのうち、確実な利得を選択することが多いとされます。
増分感受性の原理:大きな金額よりも小さな金額の増加により、より感受性が高まる傾向があるため、同じ金額の利得でも、小さな増加はより魅力的に感じられるとされます。
参照点の原理:人々は、ある基準となる参照点からの差異を重視するため、ある参照点からの損失や利得の大きさによって、意思決定が変わることがあります。
権利の原理:人々は、所有しているものや将来得られる可能性があるものを大切にし、それを失うことに対する損失を避ける傾向があるため、所有権を重視することがあります。
これらの原理に基づいて、プロスペクト理論は、人々が意思決定をする際に、リスクや不確実性をどのように評価しているかを説明しています。この理論は、金融市場やマーケティング戦略など、様々な分野で応用されています。
例えば、株式投資においては、投資家が損失回避の原理に従って、株価が下がる可能性がある銘柄よりも、確実な利益が見込める銘柄を選ぶ傾向があるとされます。また、プロスペクト理論を活用したマーケティング戦略では、消費者が参照点とする価格を考慮して、値引きやセールの戦略が用いられることがあります。
一方で、プロスペクト理論には批判的な意見もあります。たとえば、実際には、人々が損失と利得をどのように評価するかは個人差があり、また、環境や状況によっても異なるため、単純な理論であるという指摘があります。
しかし、プロスペクト理論は、人々が意思決定をする際に重要な要因を特定し、それを利用してより良い意思決定をすることができる可能性があることを示唆しています。また、プロスペクト理論は、現代の経済学における主要な理論の一つであり、経済学に限らず、心理学や社会科学においても広く用いられています。